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土(長塚節著)についての着目点

長塚節の「土」という作品は、農民文学の最高峰と言われているものである。


ただし、この小説なかなかに読みにくい。


というか、ひたすら暗い話である。


なぜ、読みにくいと書いたかというと、登場人物がかなりいて、しかもそれぞれのキャラクターが立っているのである。


つまり、単純にだれが主人公なのかというのが分かりにくい。これについては、「『土』の主人公は、登場人物を取り巻く自然、風俗などすべてを含んだもの」という解釈をする人もいるくらいである。もしかするとそう考えるべきかもしれない。


ただし、読書感想文を書くとなるとやはり誰かを中心に据えないととらえどころのない冗長な物語に思えてしまうだろう。


この小説には展開らしい展開というものもないから余計なのである。


そういうことを鑑みながら、全体を通して、普通に考えると、おそらく主人公は勘次であろうと思われる。


ただ、お品が死ぬまでの場面はやはりお品の方がキャラクター性が高いような気がする。


お品は破傷風で死んでしまうので、お品を主人公から除外するとしても、おつぎの書かれ方が大変詳しいので、おつぎを中心に据えて読むことも可能だと思われる。


卯吉のキャラクターもかなりはっきりしているし、勘次と卯吉は始終反目しているのでその描写もかなり克明に記されている。


ただし、物語の終末で登場するのが勘次なので、勘次を中心に読んだ方が全体を理解しやすいかもしれない。


小説を書く技法として、「トリックスター」というものが使われることが多い。


というか、文学の一種常識的なものと考えることもできる重要なものである。


これは、主人公かどうかに限らずトリックスターは、社会秩序、文化秩序、道徳規範を破壊する存在として書かれることが一般的である。


では悪者なのかというと一概にそうとも言えない。


なぜなら、社会秩序、文化秩序および道徳的規範を破壊する一方で、文化の成立、秩序の確立をもたらすという役割を持っているからである。


いわゆる両義的存在である。


すると、このパターンに勘次はすっぽりとはまってしまっている気もするのだ。


もうひとつ、この「土」という作品全体を通してかなり重要な位置を占めているのが、地主の「お内儀さん」である。


地主の妻にしてはかなり仲裁者的な役割をしており、勘次をほぼ完全に支配している。


勘次もおつぎもお内儀さんには逆らうことができないし、またお内儀さんなしにはあらゆる社会生活もなりたたないくらい影響力が強い。


それは、物語の結末が、勘次とお内儀さんの会話になっていることでもよくわかる。


案外この「お内儀さん」の言葉や立場をどう読み取るかというのが、この作品を読む上での助けになると思われる。

読書感想文の書き方

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