変身
夏休みになると急激に売り上げが増える本が、今回ご紹介するカフカの変身とカミュの異邦人だそうです。
これは夏に向いている本だからというわけではなく、単に薄い本であるという理由らしいのですが、その薄い本がここまで読み継がれているのには理由があるのです。
変身のあらすじ
主人公のグレゴール=ザムザはある朝突然自分が虫になっていることに気づく。
外交販売員である彼はなんとか仕事に行こうとするが、何本もある足があちらこちらに動いてうまく起き上がれない。
そのうち時間も過ぎ、支配人が自宅を訪れてくる。
家族も心配するが、夜カギをかけて眠る習慣があるので突然のぞかれる心配はなかった。
彼は一家の働き手として家計を支えているのであった。
その責任感だけが彼を起こそうとするがそれは徒労に終わる。
結局家族に姿を見られたザムザは部屋からでない事になる。
それでも妹だけは食べ物を差し入れるのだが、今まで美味しいと思っていたミルクにパンを浸したものはまずくて食べられない。
そのかわり、腐りかけたようなものを美味しく感じるようになってしまった。
一家の働き手を失った家族は前向きに生活について検討する。
貯金が少しあることと、父親に勤め先が決まったこと、母親が内職をすること、それに改めて考えてみるると広すぎる部屋を下宿として貸すことによって生活が成り立つという明るい見通しがたったのだ。
入ってきた下宿人は大変横柄な振る舞いをするが、下宿人を受け入れたことのない家族は納得してしまう。
ザムザは部屋の壁を這い回ることだけに喜びを感じていた。
あるとき、ふとザムザが虫の姿でみなの前に姿を現してしまう。
そのザムザに父親はリンゴを投げつける。
その投げつけられたリンゴが原因で、以前のように壁を這い回ることができなくなり、また体も徐々に弱まっていく。
妹は食事を差し入れはするが、残ったものはすべて掃き出して始末する。
ザムザの部屋の掃除も彼女の仕事だった。
ザムザは彼女に気をつかって、彼女が部屋にいるときには隠れているようにする。
下宿人を追い出し、代わりに雇い入れたお手伝いがザムザの食事を差し入れるようになる。
彼女はザムザを見ても驚かなかったのだった。
そうしているうちに、ザムザは体が弱り誰にみとられることもなく死ぬ。
彼が死んだことを知った家族は、休暇願を仕事先に書き、三人でピクニックに出かける。
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変身のテーマは不条理である。
この話にはなぜザムザが虫に変身してしまったのかその理由も書いていない。
そして、ザムザもなぜ自分が虫に変身してしまったのか考えることもしない。
ザムザが虫になってしまうと、一家の家計を支えているという自負があった彼の存在価値もなくなってしまう。
家族はザムザが働かなくても生活できることが分かったからだ。
そうなると家庭の中にザムザの役割はない。
それまで弱々しかった父親は仕事を見つけたとたんに変貌する。
そしてザムザにリンゴを投げつけるのだ。
結局は父親の投げつけたリンゴが原因でザムザは死ぬことになるわけだが、果たしてそれは虫になった息子に対する父親の勝利なのか。
そもそもザムザにはなんの存在価値もなかったのか。
家計を支えるために仕事をこなしてきたザムザには何らかの価値があったのか。
それとも虫になったザムザに存在価値がなかったのか。
家族が死んだことにより、自分たちがあるものから解放され、休暇を取る必要性を考える家族。
休暇届を三人で書きながら、ピクニックに行くことを提案する家族。
考えてみれば、すべてが不条理な状況を描いている。
もしかすると、変身に出てくる虫はなにか別のものを表しているのかもしれない。
寝たきりの老人、失業者、病人、ひきこもり、ニート……etc。
この話の中のあらゆる不条理さの中から何を読み取るのか、それが読書感想文の主題となるだろう。
